CO2排出量対策万全ですか? プロセスマイニングがCO2削減目標管理を一歩先に進める

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2020年よりパリ協定の運用が開始され、各国や企業のCO2排出量削減への対応が活性化してきました。しかし、技術的な検討は着実に行われているようですが、排出量の管理手法については各企業での準備は進んでいるのでしょうか。 今後、企業は以下の様な状況に直面する中で、確かな数値情報の把握が求められます。

上田 聡(Satoshi Ueda)
エバンジェリスト
Celonis株式会社

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  • 猛暑の中、工場はフル稼働。今日の工場のCO2排出量はどれだけか、通常時との差異は。
  • 製造ラインの統合。これまでと比べてCO2排出量はどう変化したのか。
  • 輸送トラックのEV化普及。従来の鉄道輸送とどちらがCO2排出量は削減できるか。

これらのニーズに応えるべく、プロセスマイニングを活用したソリューションを開発し、

新たな挑戦を行っている事例をご紹介します。

EY新日本有限責任監査法人FAAS事業部デジタルチームのリーダーDirk Hermans氏、マネージャーRaphael Niecko氏に「CO2排出量目標分析ソリューション」の取り組みについてお話を伺いました。

現状はテクノロジーも使われないマニュアル作業

Niecko氏によると「CO2削減問題の専門家と話をしていて、『排出量を管理するプロセスではテクノロジーが使われずマニュアル作業が多く、分析をする機能も無い』とのことで。

何かソリューションが使えないかと考えたのが取組みのきっかけ」とのことです。EYでは業務効率化やコンプライアンスの管理で利用が拡大しているプロセスマイニングの手法がCO2排出量管理でも利用できるのでは考えました。そこで、Celonisを利用して、EYの日本とインドとでチームを作り、Celonisのエンジニアからの支援も得ながら、2020年3月よりモデルの構築を開始し6か月でプロトタイプを完成させたとのことです。プロトタイプ作成の際には、プロセスマイニングの世界で著名なLars博士にもアドバイスをもらっており、Lars博士からは出来上がったEYのプロトタイプモデルについて「この取り組みはサステナビリティを一歩前進させる意義深いものであり今後に期待する」と称賛するコメントをもらっています。

科学的アプローチに基づいた排出量管理へ

ソリューションの仕組みとしては従来からのプロセスマイニングによる業務効率化分析に追加する形でCO2排出量分析も加えることができるとのことです。従って、企業は従来の業務効率化目標とともに今後ニーズの高まるCO2排出量削減目標の両面から経営上の意思決定を行うことができるようになります。

具体的には以下のようなことが可能になります。

  • リアルタイムで連携したデータによる直近のCO2排出量の算出
  • 原料供給元、製品別、製造工程、製造エリアなどでデータをドリルダウンした分析
  • 製造量や搬送手段を変更した場合のCo2排出量のシミュレーション

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このEYのソリューションでは、プロセスマイニングツールとしてCelonisを利用していることで、リアルタイムでのCO2排出量の算出が可能となっています。今現在のCO2排出量はどれだけか、と言うのが数値として把握できないと、業務を遂行する中で実践的なCO2排出量対策は出来ません。

CO2排出量の分析ニーズは、必ずしも製造業だけのものではありません。Hermans氏によると「金融機関が融資先の業務内容をESGの視点から評価するのにも使われる」とのことです。このソリューションにより、企業は業務効率化目標とともに今後ニーズの高まるCO2排出量削減目標の両面から経営上の意思決定を行うことができるようになります。まさにこれはESG時代に向けてビジネスのゲームチェンジャーとなりうるソリューションではないでしょうか。

今後CO2排出量データの充実が求められる

ただし、今後それぞれの企業でこのソリューションを活用していくには、各企業の状況に合わせたCO2排出量の数値データの整備が必要、現在はまだプロトタイプの段階である。しかし、このプロトタイプを取っ掛りにして各企業が実践的なCO2排出量管理の検討を始めることになればとEYでは考えているとのことです。データについては、企業が自ら用意するケースと、既に市場や専門家の間で利用されているものを使う場合があると想定しているとのことです。Niecko氏は「このソリューションがいろいろな企業に導入されることで、世の中でデータが揃ってきたら、業界で標準化された共有データベースを作るようなことも考えられる。これにより、更にCO2削減対策は進化する」と期待しています。