インダストリー4.0の「実行のギャップ」を埋めるCelonisが描くプロセスインテリジェンスとAI

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2026年1月14日(水)に開催された「日本生産管理学会・関東支部研究会」にて、Celonis株式会社は、プロセスインテリジェンス(PI)と最新AI技術がどのようにこの課題を解決し、自律的な企業を実現するのかについての講演を行いました。本稿では、その内容の一部をご紹介します。

製造業が目指す究極の姿「インダストリー4.0」。しかし、多くの企業がそのビジョンと現実の間の「実行のギャップ」に悩まされています。2026年1月14日(水)に開催された日本生産管理学会・関東支部研究会にて、Celonis株式会社の渡井より、プロセスインテリジェンス(PI)と最新AI技術がどのようにこの課題を解決し、自律的な企業(オートノマス・エンタープライズ)を実現するのか、その最前線が語られました。

【概要】

日時:2026年1月14日(水)

議論テーマ:インダストリー4.0の「実行ギャップ」を埋めるCelonisプロセスインテリジェンス(PI)とAI

参加者:30人(オンライン含む)

場所:法政大学大学院 新一口坂校舎

1. インダストリー4.0を阻む「3つの壁と解決策」

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本講演では、ドイツ発の国家ビジョン「Industrie 4.0」の現在地と、その実現を阻害する課題について掘り下げました。現在、多くの企業がデジタル化を進める一方で、依然として「ビジョン(理想)」と「実行(現実)」の間には深い溝があります。

  • ITと現場のギャップ: IoTでデータは取れても、それが「どの業務プロセス」に紐付いているかが不明瞭(ブラックボックス化)。
  • 部門間のギャップ: ERPやSCM、CRMといったシステムが分断され、エンドツーエンドの最適化ができない(データサイロ化)。
  • 戦略と実行のギャップ: 改善の示唆は得られても、それをリアルタイムに実行・制御する仕組みが不足している。(構造的制約)

Celonisは、これらを埋めるための「共通言語」としてプロセスインテリジェンス(PI)を提唱。単なるデータの可視化にとどまらず、業務の裏側に隠れた「真のプロセス」をデジタル上で再現し、改善へと繋げる重要性が語られました。

2. 進化するプロセスマイニング:オブジェクト中心(OCPM)の衝撃

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従来のプロセスマイニングは、1つの対象(例:注文)を追うだけでした。しかし、実際の業務は「受注」「製造」「配送」といった複数のプロセスが複雑に絡み合っています。

最新の 「オブジェクト中心プロセスマイニング(OCPM)」 では、これらを同時に表現。例えば、部品不足が製造を遅らせ、それが配送にどう影響するかといった「裏側で起きている真実」を深掘りできます。

さらに、AIがボトルネックを自動特定し、改善をリコメンドします。ドイツ企業らしく、全ての非効率を「定量化(金額換算)」して示すのがCelonis流です。

3. 企業におけるAI活用の3つのフェーズ

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渡井は、Celonisが提供するAIには3つの層があると説明します。

  • 生成AI:創造性を高め、データへのアクセスや人間のような判断を模倣。
  • 予測AI:在庫不足や納期の遅延を事前に予兆。
  • 処方型AI:アクションを最適化し、最適な発注先やタイミングを指示。

これにより、例えば与信管理では「過去の支払い履歴に基づき、この顧客の受注を止めるべきか」といった高度な判断をAIが支援・代行できるようになります。

4. ユースケース

世界中のトップ企業が、どのようにAIとPIを組み合わせて成果を出しているかが紹介されました。

  • メルセデス・ベンツ: 世界30以上の工場に展開。PIを活用して生産ラインの遅延をリアルタイムで検知し、納期回答の精度向上と在庫最適化を実現しています。
  • アブネット(Avnet): 生成AIを活用し、1日に数千件届く見積依頼の処理を自動化。AIがPIのデータを参照し、最適な回答案を作成することで、意思決定のスピードを劇的に向上させました。
  • DHL: AIエージェントを活用し、経費精算の一次チェックを自動化。疑わしい申請を自動でクラスタリングし、生産性を向上させています。

デモンストレーション

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デモについてはCelonis株式会社の松本から実施。最初のデモでは、受注から入金(Quote-to-Cash)プロセスにおける「与信ブロック」の停滞を解消するシナリオが紹介されました 。

Demo 1: アノテーションビルダー(Annotation Builder)

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  1. 課題の可視化: プロセス分析画面では、与信ブロックの解除における手作業中心の実態が浮き彫りになりました 。
  2. ビジネス価値の数値化: 「Value Scanner」機能を用い、オブジェクト中心プロセス(OCPM)によって納期遵守率への影響を可視化。与信ブロックの最適化が、顧客満足度向上に向けた最優先課題であることが特定されました 。
  3. AIによる意思決定の代行: ここで登場したのが「アノテーションビルダー」です。Celonis 上のデータ(受注金額や支払い率など)をLLM(大規模言語モデル)へ送り、独自のプロンプトを設定することで、これまで人間が経験に基づいて行っていた「この注文は受理すべきか」という判断をAIに学習させます 。
  4. 実運用への適用: デモでは、一般的なAIでは不可能な「自社独自の指標」に沿った判断理由とアクション提案(解除・エスカレーション等)が、信号機のような3色(緑・赤・オレンジ)で分かりやすく提示される様子が実演されました 。

5. 自律的制御を実現するオーケストレーションエンジン

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従来のタスク自動化レベルを超え、企業全体の業務構造をリアルタイムかつ動的に統合管理する。オーケストレーションエンジンは、自律的企業の実現に向けた最も重要な要素であると語られました。

  • 4段階の成熟度: 自律的制御に至るには「可視化」「透明性」「予測可能性」を経て、最終的にシステムが「自己最適化」および「自己実行」を行う第4段階へ到達する必要があります 。
  • 全体最適の指揮者: 部分最適に留まりがちなRPA(タスク自動化)とは異なり、OEはシステム、AIエージェント、人間の作業を単一の基盤で統合し、デジタルツインの洞察に基づきプロセス全体を動的に制御します 。
  • AIへの「文脈」供給: 一般的なAIが企業で使いにくいのは「自社の文脈」を知らないためです 。OEはPI Graphから「生きたデジタルツイン」の情報をAIに供給し、AIが「なぜこのアクションが必要か」を推論できるようにします。

Demo 2:オーケストレーションエンジン(Orchestration Engine)

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続いて、発注プロセスを例に、AIが自律的に動き、不足事態を解決する「オーケストレーションエンジン」のデモが行われました 。

  1. プロセスの異常検知: 発注商品のうち、納品遅延が発生している深刻な状況を瞬時に把握。
  2. 自律的なエージェントの起動: 優先度が高いにもかかわらず数量確認が取れていない資材に対し、ボタン一つでAIが自動的にメールを生成し、GoogleFormによる確認リクエストをベンダーへ送付します。
  3. AIと人間のスムーズな連携:
    1. ベンダーが回答した結果は即座に Celonis にフィードバックされます。
    2. 受領した結果に基づき、AIが「代替ベンダー」を即座に推奨。
    3. 担当者は、自動生成された詳細な発注書を確認して送信するだけで、不足分の手配を完了できました 。
  4. AI活用成果のモニタリング: これらのアクションの結果、ブロック解除の時間が劇的に短縮されたことがトラッキンググラフで示されました。

6. 業務監査の変革:サンプリングから「全数検査」へ

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最後に触れられたのが、業務監査への応用です。従来の監査は一部のデータを抜き出す「サンプリング」でしたが、Celonisを使えば「全数テスト」が可能になります。

不正検知:深夜1時に行われた不自然な入金消し込みなどを自動発見。

J-SOX対応:業務手順の逆流(請求前の入金確認など)を検知。

継続的監査:期末だけでなく、毎日リアルタイムでリスクをモニタリング。

これにより、監査コストの削減だけでなく、企業経営の透明性と信頼性を劇的に高めることができます。

7. QAセッション

QAセッションでは、日本の製造現場特有の課題や、監査対応における証跡管理のあり方について、活発な議論が行われました。

8. まとめ:AIをビジネスに「溶け込ませる」

Celonisが目指すのは、単にLLM(大規模言語モデル)で検索することではありません。企業の深い業務データ(プロセスインテリジェンス)をAIが理解できる形式に変換し、具体的な改善アクションに繋げることです。

インダストリー4.0という理想を、データとAIの力で現実のものにする。Celonisの挑戦は、日本の製造業にとっても大きなヒントに満ちています。