「Process Intelligence Day Tokyo 2025」開催―「No AI without PI(プロセスインテリジェンスなしにAIなし)」 イベントレポート第五弾
Celonis は、2025年7月9日、ANAインターコンチネンタルホテル東京にて年次イベント「Process Intelligence Day Tokyo 2025」を開催。日本の企業に向けてプロセスマイニングの最新動向やその活用事例を紹介しました。本稿では、各講演の重要なポイントを抜粋して紹介します。なお、イベント当日の各講演については、こちら からご覧いただけます。
NECの映像AIとプロセスマイニングが実現する物流DX最前線
ランチセッションでは、まずは日本電気株式会社(NEC) コンサルティングサービス事業部門 データドリブン・プロセス変革グループ 主任の舘鼻 佑介様が登壇しました。
NECは自らを「クライアントゼロ」と位置付け、間接材調達やSAPクリーンコア化などさまざまなテーマに取り組み、FY24には数億円の価値創出を達成。その一例として、Celonisでサプライチェーンデータを分析し、過剰在庫、欠品リスクなどを可視化して、迅速な意思決定による在庫最適化の事例を紹介しました。
しかし、真のEnd to Endでの可視化には、システムログがない倉庫でのピッキングや検品といった物理的な現場作業という壁があります。この「データ化されていない領域」が多くの企業の課題だと舘鼻様は指摘。これを解決するのが、NECの映像AI技術とCelonisの組み合わせだと話します。
想定ケースとして舘鼻様は、ある物流拠点の例を紹介しました。映像AIが現場作業者の動き(ピッキング、検品など13種類の行動)を自動でデータ化し、Celonisで分析して主体作業と付帯作業の比率や、特定の作業員が紙の指示書を頻繁に確認しているといった非効率な動きなどを可視化。舘鼻様は、「データから精度の高い仮説を立てることができます」と、映像AIとCelonisを組み合わせる価値を強調しました。
最後に舘鼻様は、「新製品需要予測や最適な配送計画立案など、特定した課題に対する多様なAI活用ソリューションを提供していきます」と、今後の展望を語りました。
在庫課題への最適解 OCPMを活用した多様な在庫課題への対応
アビームコンサルティング株式会社のランチセッションでは、 同社 サステナブル SCM戦略 ユニット プリンシパルの大村 泰久様が登壇。多くの企業が抱える在庫課題へのアプローチについて講演しました。大村様は、欧米企業と比較して日系企業の在庫コントロールに遅れがあると指摘。その原因として、「プロセスマイニングなどのデジタルテクノロジーへの取り組みの遅れが挙げられます」と話します。
課題解決のテクノロジーとして、OCPM(Object-Centric Process Mining)とAIの活用を挙げ、「OCPMによりサイロ化されたデータを包括的に可視化でき、さらにプロセスインテリジェンス(PI)とAIの組み合わせが実データに基づいた具体的な改善提案を可能にしました」と大村様は説明。その実践例として、市場の需要変動に対応できず製品在庫が過多になっていた企業の事例を紹介。納期遅延のある製品に紐づくBOMを展開、プロセス全体を分析し、発注登録の遅れが在庫不足を招き、製造・出荷工程に連鎖的な遅延の原因だったことをOCPMにより特定できたと示しました
大村様は、OCPMやAIなど、テクノロジーの活用が進み、サプライチェーン全体で課題解決に取り組む企業が増えている現状に触れ、アビームコンサルティングとCelonisにより幅広い領域で価値創出の支援が可能だと述べ、講演を締め括りました。
NEXT Step of the SCM mining 課題特定後のSCM打ち手をどう考えるか?~TISが推奨するSCM変革の推進アプローチ~
TIS株式会社のランチセッションでは、 同社 ビジネスイノベーション事業部 ファンクション&プロセスコンサルティング部 ディレクターの羽田野 大樹様が登壇し、SCM改革におけるリスク対処型アプローチについて講演しました。
羽田野様はまず、SCM改革が直面する「品質追求のKPIと、コスト追求のKPIが衝突する」という根本的な問題を提起。その上で東洋哲学の「因縁果報」の概念を引用し、「問題発生時に顕在化する潜在的リスクをいかに見つけるかが重要であり、需要特性と供給制約のギャップを把握してコントロールすることがSCM改革のポイント」だと説明しました。
このリスクに対処する方向性として羽田野様は、需要変動の因子を学習させてモデリングを行う「予測」、顕在化した問題に当てる重要KPIを2つに絞った上で他のKPIは活動KPIや管理KPIとして構造化する「可視化」、在庫プールなどを活用して時間や生産能力をコントロールする「バッファ制御」の3つを提示。中でもCelonisで実装可能な可視化については「重要KPIの数字がよくない場合はこの管理KPIを見たら原因が分かる、という構造化を行うことが大事です」と強調します。
その上で羽田野様は、競合の新製品やSNSで需要が跳ね上がるといったケースは予測が機能しないため、「VUCA時代では予測に頼りすぎず、可視化された情報をもとにバッファをコントロールする発想が重要です」と訴え、講演を締め括りました。
Celonisで何が変わる? 導入検討中の方も必見! 圧倒的なスピードでの価値試算!
株式会社システムサポートのランチセッションでは、 同社Value Creation事業本部 事業本部長の榎本 美希様が登壇。多くの日系企業がプロセス改革の推進に時間を要する中で、同社が開発した「Celonis アクセラレータ」を活用して価値実現を図る手法や実例について講演しました。
このアクセラレータは、改善効果を試算する「Value Calculator」、知見を凝縮した環境で迅速に改善機会を発見する「Rapid PoV Framework」、そして約1週間で可視化・分析を開始できる「Jump Start App」の3つで構成。価値の特定から証明、実現までを高速化します。
榎本様は、データ整備の遅れや合意形成を重視する文化から、多くの日系企業が浸透していない現状を指摘。「このアクセラレータは、そうした日本特有の課題を乗り越え、圧倒的なスピードで価値の試算と合意形成を実現するためのものです」と、その有用性を語りました。そして、具体的な顧客事例として、改善機会の試算からPoV環境構築・実際の改善機会発見まで1カ月というスピードで実現したヘルプデスクの業務改善実績や、2カ月でシステム開発企業の複数プロセス分析を行った例を紹介。いずれの事例でも数千万円規模の改善効果があったといいます。
榎本様は最後に、「プロセスをマネジメントし、マイニングし、トランスフォーメーションする。このトライアングルを効率的に回すことで、他社の追随を許さない圧倒的な競争優位性を確立できます」と、その重要性を訴え講演を締め括りました。