サプライチェーンの「可視化」の、その先へ。現場の「勘と経験」を、AIはどう支えられるのか?

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先日、Celonis主催で、製造・ハイテク業界のSCMリーダーの皆様にお集まりいただき、これからのサプライチェーンについてじっくりと意見交換をする機会を持ちました。

開発から供給までをデータで繋ぎ、AIが全体最適を促す——。そんな未来像を共有した上で、各社の現場最前線で活躍されている皆様と議論したのは、変化の激しい時代だからこそ抱える「リアルな悩み」でした。

Celonisバリューエンジニアリング統括本部の寺田です。

先日、Celonis主催で、製造・ハイテク業界のSCMリーダーの皆様にお集まりいただき、これからのサプライチェーンについてじっくりと意見交換をする機会を持ちました。

冒頭、私からは先日弊社のグローバルイベント 「Celosphere」 で発表されたばかりの “Enterprise AI” のコンセプトや、PLM(製品ライフサイクル管理)とSCMをデータで繋ぐオーケストレーションの最新事例などをご紹介させていただきました。

開発から供給までをデータで繋ぎ、AIが全体最適を促す——。そんな未来像を共有した上で、各社の現場最前線で活躍されている皆様と議論したのは、変化の激しい時代だからこそ抱える 「リアルな悩み」 でした。

1. 現場が抱える3つの「もどかしさ」

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皆様のお話から見えてきたのは、外部環境の変化に対して、これまでの「勝ちパターン」や「安定したオペレーション」が通用しなくなってきている、という共通の感覚です。

1.1. 「適正」が見えにくくなっている

事業再編や市場変動を経て、「何をもって適正在庫とするか」の基準が複雑化しています。全体像は見えていても、膨大な数のパーツ一つひとつまで目が届かず、「気づいたら過剰になっていた」というケースも少なくありません。

1.2. 「人の頑張り」への依存

システムが分断されていたり、変動要素が多すぎたりする状況。その隙間を埋めているのは、現場の方々の「勘」やベテランの「経験則」です。この 素晴らしい現場力 に頼る一方で、リードタイムが年単位で動くような今の状況では、人手による調整だけでは限界も感じられていました。

1.3. 技能伝承の難しさ

「ベテランの暗黙知がないと回らない」。この 属人化をどう解消するか は喫緊の課題です。システムに置き換えたいが、その高度な判断ロジックをどう実装すればいいのか、という切実なテーマも共有されました。

2. GE時代の原体験:プロセスの「その先」にあったもの

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皆様のお話を伺いながら、私の思考はふと、かつて身を置いたGEヘルスケアでの日々に飛んでいました。

ご存知の通り、GEはシックスシグマやリーンといった手法が深く浸透した、世界でも指折りの「強い現場プロセス」を持つ組織です。

けれど、そんな環境であっても、「設計変更(部品の切り替え)」のタイミングだけは、常に緊張感のある難しい局面でした。

デジタル上で図面が新しくなっても、物理的な倉庫には大量の部品があり、新しい部品の調達リードタイムも複雑に絡み合います。システム上の計画と、目の前の現実。その間にどうしても生まれてしまう「時間のズレ」を埋め、ラインを止めずに移行を成功させていたのは、結局のところ、現場のプロフェッショナルたちによる驚くほど緻密で、粘り強い調整力でした。

プロセスが足りないわけではありません。現代のサプライチェーンの物理的な複雑さが、「人が人力で管理できる限界」を超えようとしている——。当時の肌感覚が、今の皆様の悩みと重なったのです。

3. だからこそ、今「Enterprise AI」なのだ

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過去の経験と、今回の議論を通じて、冒頭でお話しした「Enterprise AI」の方向性は間違っていないと改めて確信しました。

今、現場が求めているのは、単にきれいなダッシュボードを見ることではありません。

「ビジネスの文脈を理解して、一緒に動いてくれるAI」です。

  • 市場の波を読んで、最適なパラメータを提案してくれる。
  • PLMと連携し、設計変更がサプライチェーン在庫に与える影響を 即座に判断 する。
  • 「そのタイミングでの切り替えは、欠品リスクがあるかも」と、そっと教えてくれる。

私たちCelonisが目指す姿は、単なるツールではありません。かつて私が現場で目の当たりにした、「システムと現実の隙間」を繋ぎ、熟練の直感をデータで解き明かす『共奏者』のような存在です。

バラバラなデータを繋いで、AIに「業務の文脈」を理解させる。そうすることで、AIは冷徹な計算機ではなく、サプライチェーン全体のハーモニーを整える オーケストレーター になれるはずです。

4. これからの変革に向けて

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「分析」から「実行」へ。

日本の現場が持つ強みに、Enterprise AIという新しい武器を掛け合わせることで、もっとしなやかで強いSCMが作れると信じています。

ご参加いただいた皆様、貴重な気づきをありがとうございました。Celonisは、ここからまた、皆様と一緒に新しいサプライチェーンの形を創っていければ幸いです。