プロセスマイニングの仕組み

ビジネスプロセスは企業の生命線です。購入、販売、支払い、回収、出荷など、組織のあらゆる業務の背後にはプロセスが存在します。プロセスの実行を改善できれば、ビジネス全体の改善につながります。そこで登場するのが、プロセスマイニングです。

企業がプロセスマイニングを必要とする理由

業界をリードする企業は、優れたプロセスが競争力を左右する重要な差別化要因であることに気づいています。そのため、プロセス改善のためのツールやイニシアチブへの投資が急増していることは当然と言えます。とりわけプロセスマイニングテクノロジーについてはその傾向が顕著であり、Everest Groupによると、2018年には9,000万ドルだった市場が2020年には3億4,000万ドルにまで拡大しています。

プロセスマイニングは、ビジネスプロセスの「MRI」を撮影するかのようにプロセスを可視化し、基幹業務の潜在的価値を発見するのに役立ちます。Celonisのプロセスマイニング®は、ビジネスプロセスの「MRI」撮影のように、企業にとって、急速に中核的な存在となっています。

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プロセスマイニングの仕組み

ERPなどのデータベースおよびトランザクションシステムの台頭以来、企業は効率的な業務運営を目指して、プロセスのデジタル化やその最適化への投資を行ってきました。

ほとんどの場合、企業のプロセスは、理想的な環境で実行されることを想定して組み立てられています。しかし、ビジネスプロセスが現実の世界で思い描いたとおりに実行されるとは限りません。

問題は、多くの組織でこれらのプロセスの実際の状態を日々把握し、理解することができていないことです。そのため、プロセスの「望ましい状態」と「現状」の違いに気付くことができません。

見えないものは修正しようがありません。

プロセスマイニングの各ステップ

Celonisのプロセスマイニング®を実行する際の基本的なステップを見てみましょう。

1. データの取り込み

現代のビジネスプロセスは非常に複雑です。これらのプロセスは、異なる種類のデータを使用し、異なるユーザーによって操作され、異なる部門に属するさまざまなシステム上で実行されています。

ほとんどのプロセスマイニングツールでは、基盤となるシステムからこうしたデータを取得する方法がいくつか用意されています。最も基本的な方法では、ユーザーがシステムからイベントログを.csv形式でエクスポートし、それをプロセスマイニングツールにアップロードするだけで済みます。しかし、先進的な企業では、リアルタイムでデータを取り込む仕組みを導入してプロセスデータを継続的に同期させています。

プロセス内の個々のビジネスオブジェクトまたはケースがシステムで処理されると、請求書が「請求済み」から「支払い済み」になる、またはカスタマーサービスチケットが「発行済み」から「解決済み」になるなど、何らかの「足跡」(フットプリント)を残します。サイクルの各ステージを通じて、これらのケースはデジタルフットプリントを残します。これをイベントと呼びます。

プロセスマイニングテクノロジーは、これらのイベントを記録したシステムログ(イベントログ)を取り込み、プロセスで発生している内容を視覚的に再構築することで、これらの足跡をたどることができるようにします。

これらのイベントログには、各イベントにつき少なくとも3つの主なプロセスデータが含まれています。

  • ケースID - 各ビジネスオブジェクト固有の識別子
  • アクティビティ - ケースがたどったプロセスのステージ
  • タイムスタンプ - 特定のケースがそのステージを通過した時刻

請求書であればベンダーの詳細、サービスチケットであれば優先度レベルなど、さらに情報を追加することで、より詳細に状況を把握することもできます。

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2. プロセスディスカバリー

すべてのデータを収集すると、プロセスマイニングが真価を発揮し始めます。

プロセスマイニングは、それらのイベントログを活用し、各ケースのすべてのステップを重ね合わせて、エンドツーエンドの業務プロセスを一つの可視化されたフローとして提示します。このように可視化されたものは、組織のデジタルツインと呼ばれることがあります。

このマップは、各ケースがプロセスの開始から終了までにたどったすべての異なるパスを統合し、イベントを時系列としてまとめたものです。各パスはバリアントと呼ばれ、標準的なパスや許容されるパスに従っていないバリアントを逸脱と呼びます。

プロセスディスカバリーでは、このインタラクティブなプロセスマップを使って、あらゆるバリアントを調査することができます。

プロセスマップをズームアウトすると、すべてのバリアントを確認できます。多くの場合、1つのマップに数百から数千ものバリアントが含まれているので、このように全体を俯瞰した図を親しみを込めて「スパゲッティ図」と呼んだりします。


または、マップをズームインして、プロセスの理想的な状態を表すハッピーパスに焦点を当てることもできます。多くのバリアントがこのパスをたどっていれば、良い状態であると言えます。

プロセスをさまざまな角度から分析して、実際にどのように実行されているかを確認できます。

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3. プロセスアナリティクス

プロセスアナリティクスでは、プロセスが非効率になる根本的な原因を把握し、それがKPIに与える影響を数値化できます。

プロセスの非効率の原因について、以下のような疑問の答えが見えてきます。

  • ボトルネックはどこか?
  • スループット時間が遅くなっている原因は何か?
  • 負荷がかかりすぎているリソースはどれか?
  • スキップされることが多いアクティビティはどれか?
  • 逸脱はどのリソースで生じているか?

または、プロセスのバリアントの影響について以下を探ります。

  • 特定のバリアントが運用コストなどのプロセスのKPIに与える影響
  • 自動化(あるいは自動化されていないこと)がプロセスのサイクルタイムに与える影響
  • 特定のビジネスアクション(お客様の与信審査によるプロセス保留など)が、特定のビジネスKPI(納期遵守率など)に与える影響
  • 確立されたプロセスに従っているケースの割合

非効率性についての仮説があれば、その仮説を検証できます。データをフィルタリングしたり、スライスしたり、ドリルダウンしたりできるビューとコンポーネントがあります。

AIと機械学習を使用して現状のプロセスをCelonisに分析させることで、非効率性をもたらしている原因のうち影響の大きいものを自動的に特定することもできます。

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4. プロセスのベンチマーキング
プロセスのベンチマーキングでは、プロセスのパフォーマンスを2つの異なる側面で比較できます。

例えば、2つの異なる国で請求書処理にかかる時間を比較したり、2つの異なるサプライヤー間での発注処理のスループット時間を比較したりできます。

プロセスのベンチマーキングを使用することで、ベストプラクティスを見つけ出し、それらをさまざまな地域、事業部門、チーム間で共有することができます。
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5. コンフォーマンスチェック
コンフォーマンスチェック では、望ましいパスを定義して、プロセスが逸脱している箇所を確認できます。

ここで、「定義されたプロセス」と「実際のプロセス」との乖離が明確になります。望ましいプロセスに従っているケースの割合や、そうでないケースの割合を把握できます。また、どのステップがスキップされているのか、順序が誤って実行されているのか、あるいは特定の段階で予想以上に時間がかかっているのかを知ることができます。

プロセスの改善を行う際は、コンフォーマンスチェックを使用することで、どの程度のケースでプロセスの実行が最適化されたかを確認できます。
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次のステップ

プロセスマイニングからアクションへ移行する方法

ここまで、Celonisのプロセスマイニング®の仕組みについて説明してきました。プロセスの現状を把握したら、次に改善に移ります。

プロセスマイニングを使用してプロセスを可視化したら、以下について検討します。

  • どのアクティビティやステップを変更する必要があるか?
  • どのアクティビティを自動化できるか?
  • どのようにプロセスを再設計する必要があるか?
  • どのようなアクションが良い成果に結びつくか?

Celonisのプロセスマイニング®の価値を最大限に引き出すには、全体的な ビジネスの実行 を改善するための、より大規模なツールやイニシアチブの一部として使用することです。

プロセス効率の指標:

サイクルタイムの短縮

プロセス完了までにかかる総時間の短縮

コストの削減

プロセス運用にかかるコストの削減

無駄の最小化

プロセスで消費されるリソースの削減

品質の向上

プロセスによって提供される総合的な価値の向上

プロセスを変更する方法:

標準化

バラつきを減らし、組織全体でプロセスが同じ方法で実行されるようにする

効率化

プロセス内のステップの数を減らし、複雑さを低減する

最適化

プロセスを調整して、特定のKPIに合わせて最適化する

自動化

プロセスワークフロー内のステップとアクションを自動化することで、人的な労力を削減する