ソリューション:データが繋ぐ、日本とフィリピンの一体改革
強い課題意識を胸に、本田氏が改革の最初のターゲットとして選んだのは「調達」プロセスだった。工場オペレーションには、生産工程、在庫管理、ファイナンスなどさまざまな領域があるが、なぜ調達から始めたのか。その理由について本田氏はこう語る。
「調達は一連のプロセスのなかでも末端に位置し、多くの課題が顕在化しやすい領域でした。既存のやり方からの変革が必要だと感じており、データを用いて現状を正確に把握することで課題を明らかにできるのではないかと、Celonisのプロセスマイニングに期待を寄せていました」(本田氏)
SAPとの親和性の高さという観点でも、Celonisは最適な選択肢だった。
2025年1月、プロジェクトは本格的に始動。しかし、メンバーは日中の通常業務にも追われるため、いかにしてプロジェクトの時間を確保するかが課題だった。そこで、Celonis側の協力も得て、週2回、朝8時からの定例会を重ね、スピーディにプロジェクトを推進した。
IT部門の繁忙期と重なるなど、データ取得の段階で多少の苦労はあったものの、本田氏は「いったんデータを取得してしまえば、その後は非常にスムーズだった」と振り返る。Celonisが持つテンプレート(スターターキット)の活用により、課題の当たりを素早くつけ、具体的な分析フェーズへと移行できた。
分析が進むなかで、本田氏は「より解像度の高い分析をするためには、現場との議論が不可欠」と判断。2025年4月末、日本のメンバーとCelonisの担当者とともにフィリピンへ飛び、3日間の集中ワークショップを実施した。
「現地法人の社長の支援も得て、現場のメンバーと一緒に取り組みました。皆が同じ場所で同じ苦労をしてきた仲間という意識が、大きな力になったと感じます。3日間会議室にこもり、侃侃諤諤と議論を重ねた結果、非常に集中度の高い有意義な場となりました」(本田氏)
この深い協働が実現できた背景には、Celonisとの独特なパートナーシップがあったと本田氏は続ける。
「Celonisは、最初から当社の業務に精通していたわけではありません。そのぶん、密にコミュニケーションを取り、真剣な議論を重ねることで、少しずつお互いの波長が合っていく。そうしたプロセスを厭わず、深く関わっていただけたことが非常にありがたかったです。だからこそ、『一緒にやっていこう』と思えるプロジェクトが組めたと思っています」(本田氏)