お客様事例:キリンホールディングス株式会社

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キリンホールディングス株式会社調達部は、調達・購買業務における業務プロセスの可視化と継続的な改善を目的に、Celonisを導入。調達・購買システムとしてSAP Aribaを利用するキリングループでは、検収処理における業務滞留を低減するために独自システムを開発・運用していたものの、実施タイミングや業務負荷による持続性の課題に直面。長年にわたってCelonisと提携関係にあるアビームコンサルティングとの協力によりCelonisで課題解決に取り組んだ結果、業務持続性の確保と工数削減を実現しました。

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Celonisの導入により、業務滞留検知・督促業務の自動化と精度向上を実現
約半年間にわたる業務モニタリングの結果、年間160人日程度の工数削減を達成

調達・購買業務にSAP Aribaを利用するキリンホールディングス 業務プロセスの可視化と継続的な改善を目的にCelonisを導入

キリンホールディングス株式会社調達部は、調達・購買業務における業務プロセスの可視化と継続的な改善を目的に、グローバルNo.1のプロセスマイニングソリューション「Celonis」を導入した。調達・購買システムとしてSAP Aribaを利用するキリングループでは、検収処理における業務滞留を低減するために独自システムを開発・運用していたものの、実施タイミングや業務負荷による持続性の課題に直面。長年にわたってCelonisと提携関係にあるアビームコンサルティングとの協力によりCelonisで課題解決に取り組んだ結果、業務持続性の確保と工数削減を実現できたという。

導入の背景:検収処理の業務滞留検知と督促の業務負荷が課題に

キリンホールディングスは、「食から医にわたる領域で、よろこびを生み出す」ことを目指し、酒類・飲料・医薬・ヘルスサイエンスなど多岐にわたる事業を展開するグローバル企業。1907年に創業し、祖業の酒類事業から飲料、バイオテクノロジーを強みとする医薬事業、食と医の中間領域であるヘルスサイエンスへと事業領域を拡大してきた。2007年に持株会社制へ移行。2025年8月現在、グループ傘下には、キリンビール、キリンビバレッジ、メルシャン、小岩井乳業、協和キリン、協和発酵バイオ、ファンケルなどの事業会社がある。

キリングループ全体の調達・購買業務を担っているのが、同社の調達部だ。各製品の原材料をはじめ、営業資材・一般資材・工場設備・エネルギー(電力・ガス)など、多岐にわたる品目の調達・購買を一手に引き受けている。「キリングループ持続可能なサプライヤー規範」を策定・運用するなど、サプライヤーとの協働を通じてサプライチェーン全体のサステナビリティ向上にも積極的に取り組んでいる。

そんなキリンホールディングスでは2022年にキリングループの基幹システムをSAPS/4 HANAへと刷新。それに合わせて2023年に間接材※向け調達システムとしてSAP Aribaを導入した。現在はグループ事業会社のほとんどがSAP Aribaを利用している。

※営業資材・一般資材・工場設備・デジタルICTシステム関連等

「SAP Aribaは、基本的にキリングループの国内生産・研究・営業拠点の購買担当者が利用しています。社外の取引先もSAP Aribaを使って見積書の提出・受注確認・請求書登録を行う仕組みになっています」(キリンホールディングス 調達部 設備グループ 主務 銅野皓介氏)

そうした中、調達部ではとくに検収処理の業務滞留という課題が表面化していった。「調達システムを使った取引は毎月約2万件に及びますが、取引先や社内担当者による取引ステータスの更新漏れによって万一支払遅延が起きてしまうと下請法に抵触するリスクも考えられます。そこで調達部は、請求書登録・承認など検収処理を徹底するために、全取引のステータスを確認して業務滞留を調査し、取引先や社内担当者に対して個別確認や業務実施の督促を行っていました。この督促には調達部で内製開発した独自システムを利用していましたが、業務開始前の早朝に対応しなければならないなど実施タイミングに制約があり、とくに締日前には業務負荷が非常に高まることが課題でした。また、独自システムは高度なIT専門性を有する一部のメンバー以外メンテナンスできない属人化した構造であり、持続性の観点から改善の取り組みが急務でした」(キリンホールディングス 調達部 サービス・間接資材グループ 寺尾賢氏)

課題を解決するために、調達部門では独自システムに代わる新たな仕組みの導入を模索。従来の方法と同等以上の業務ステータス管理が可能で、より高い精度で業務滞留を抽出して督促を自動化できるソリューションがないか、同社のデジタルICT戦略部に相談を持ち掛けたという。

ソリューション:SAPシステムへの適用実績と技術力によりCelonisを選定

相談を受けたデジタルICT戦略部が調達部に提案したのが、グローバルNo.1のプロセスマイニングソリューション「Celonis」の導入だった。

「当社では、基幹システムをSAP S/4 HANAへ切り替えたのに合わせ、データ活用による継続的な業務改善を推進するためにプロセスマイニングソリューションを導入することにしました。複数のソリューションを比較検討した結果、SAPへの適用実績があり、技術力に優れたCelonisを選定しました」(キリンホールディングス デジタルICT戦略部 主査 五代博昭氏)

すでにキリングループの物流部門でCelonisを活用した取組みをアビームコンサルティングとともに実施していたデジタルICT戦略部は、調達部の課題を解決するソリューションとしてもCelonisが最適だと判断。日本たばこ産業の調達部門での導入事例も参考に、調達部に対してCelonisの導入を提案した。

「Celonisを活用すれば、ステータスの変化や最終処理日から業務滞留を検知し、督促メールを自動送信できることが分かりました。調達部が目指す自動化が要望通りに実現して課題解決につながると明確に推察できたこともあり、既存の独自システムをCelonisに置き替えることにしました。SAP Aribaによる調達システムの導入支援を担当したアビームコンサルティングにCelonisの知見があるという安心感もCelonis導入の決め手になりました」(寺尾氏)

調達部がCelonisの導入を決定したのは、2024年10月のこと。そこから調達部とアビームコンサルティングが協力して要件定義から開発・テストまでを約2カ月の間に完了させ、2025年1月から本番稼働を開始。ロジックの開発は主にアビームコンサルティングが担当した。

「業務滞留の検知ロジックが複雑だったこともあり、調達部と密なコミュニケーションを図りながらロジックの検討・実装・アウトプットの確認サイクルを繰り返すというアジャイル的な手法で開発を進めました」(アビームコンサルティング エンタープライズトランスフォーメーションビジネスユニット マネージャー 森英章氏)

「SAP Ariba特有の複雑さからAPI連携の初期設定、データ抽出、英語表記の変換、タイムゾーンの変換など技術的課題に苦労しましたが、イレギュラーなステータスの検知も含む高精度の仕組みができたと考えています」(アビームコンサルティング SCM改革戦略ユニット シニアコンサルタント 篠原利奈氏)

導入効果:業務自動化により年間160人日程度の工数削減を達成

Celonisを活用した新しいシステムには、以下の5つの機能が実装されている。

① サプライヤーへの発注未受領リマインド

発注から1週間以上アクションがない場合、自動でリマインドメールを送信。

② サプライヤーへの請求書登録リマインド

納品後の請求書登録を自動検知し、未登録の場合はリマインド。

③ 社内発注者への承認リマインド

請求書登録済み案件に対し、承認未実施の場合は自動通知。

④ 異常値検知

品目ごとの平均数量から逸脱した発注や、一定の閾値以上の高額案件を抽出。

⑤ 一人承認の検知

発注者と承認者が同一人物の場合、適切な上長承認を促すリマインドを送信。

これらの機能は従来の独自システムでは実現できなかったものであり、業務の自動化と精度向上に大きく貢献しているという。

「これまでの属人化した内製システムには業務持続性に懸念がありましたが、Celonisの導入によってロジックを明文化できたとともに、データ加工から自動発報まで1システムに統一されたことで業務持続性が高まったと考えています。導入から約半年間にわたる業務モニタリングの結果、年間160人日程度の工数削減を達成するという定量的な効果も確認できました」(寺尾氏)

「メール案内の精度向上と毎日の自動処理により、発注・受注・請求書登録・承認といった一連の業務で滞留やミスが減少し、業務が自然に流れるようになったことが効果の証だと実感しています」(銅野氏)

「取得難易度が高い個別伝票の最新ステータスについても、Celonisの自由度が高いデータ加工機能によって正確に取得できるようになりました。結果的に無駄な督促業務も削減できています」(キリンホールディングス 調達部 設備グループ 主査野口泰弘氏)

Celonis導入プロジェクトの成功は、調達部のマネージメント層からも高い評価を得ている。

「システム設計は、ユーザー側の『システム構造・制約の理解』と、開発側の『調達業務の理解』が、成果物の価値を大きく左右します。今回のプロジェクトではキリングループの調達業務フローをアビームコンサルティングにしっかり理解していただき、システムの構造や制約を分かりやすく伝えていただいたこともあり、想定より早く期待以上のシステムが出来上がりました。調達部では成功と呼べるプロジェクトとなったと評価しています」(キリンホールディングス 調達部 主幹 田中政広氏)

今後の展開:将来的に営業・生産・財務など他部門への展開も視野に

今回のCelonis導入によって検収処理の業務滞留と督促の業務負荷という課題を解決した調達部では、引き続きシステムの改善を繰り返しながら運用を続けていくという。具体的にはマスターメンテナンスの自動化による運用の効率化を進めながら、業務滞留の要因可視化による新たな課題発見にもつなげていく考えだ。

調達部には今後の拡張予定はないものの、キリンホールディングスとしてはCelonisの運用を情報系グループ会社のキリンビジネスシステムへと段階的に移行していく方針だという。

「調達部での導入成功事例を受け、将来的にはSalesforceやServiceNowにCelonisを適用するなど、営業・生産・財務など他部門への展開も視野に入れています。また、AIや自律型エージェントの活用によるさらなる自動化にも取り組んでいきたいと考えています」(五代氏)

Celonisはこれからも、キリングループの業務プロセス改善に役立てられていくことだろう。