ソリューション:プロセス横断とAI活用で業務の全体像を掴む
単一プロセスの改善活動だけでも、マクニカは24個の改善ユースケースを発見するなど大きな成果を見出していた。しかし、さらなる高みを目指し、同社はプロセス横断での分析、そしてAIの活用へと踏み出した。
1. OCPMによる「デジタルツイン」の実現と全体最適化
夜間バッチで自動更新されるはずの受注伝票の価格が、なぜか日中に手動で変更されている——その根本原因は、ERPではわからない営業担当者と顧客との交渉や、別システムでのマスター登録など、複数のプロセスにまたがって存在していた。
こうした相互に関係し合うプロセスの実態を正確に捉えるのが、OCPMだ。OCPMは受注、品目、出荷といった関連オブジェクトを横断で分析し、プロセスを立体的に可視化することで、これまで見えなかった根本原因の特定を可能にする。
マクニカはOCPMを導入し、CRMからERPまで、商談から受注に至るプロセスを横断で繋ぎ合わせ、業務のリアルな姿を再現する「デジタルツイン」を実現した。
この取り組みをリードした藤本氏は、その過程と成果を次のように語る。
「システムを横断してデータを繋ぐうえでは、いくつかの挑戦がありました。まず、システムごとに担当者や保守パートナーが異なるため、通常の業務があるなかでヒアリングを行い、専門的な知見を集める必要がありました。また技術的にも、システムごとにデータを紐づけるための識別情報の扱いが異なっており、どうすればこれらを正確に連携させてプロセスを可視化できるかが大きな課題でした。
しかし、Celonis社のサポートも得ながらこの課題を乗り越えることができました。その結果、商談(CRM)から受注(ERP)までの一連のプロセスを初めて横断で可視化できたのです。これにより、たとえば1つの受注に対してどれだけ過度な訪問や見積作成が行われているかといった非効率を発見できました。さらに、受注時にオペレーターが入力していた情報が、実はその前の商談段階でCRMに登録済みだった、といった部門間の重複作業も明らかになり、大きな成果が得られました」(藤本氏)
2. 国内初! CelonisのAI活用による非構造化データの分析
OCPMで大きな手応えを得たマクニカが次に挑んだのが、メールという非構造化データを取り込んだAI活用だ。これは、Celonisの導入事例において国内初の取り組みとなる。部門間の煩雑なコミュニケーションの中心にあったメールをAIで分析することで、これまで見えなかった課題の可視化と効率化を目指した。
「当社の営業担当者がハブとなり、部門を横断して多くのコミュニケーションが発生していました。これをAIを使ってスリムな形にすることで、より本来の営業活動に多くの時間を割けるようにすることが狙いです」(藤本氏)
この取り組みでは、Celonisが開催したAIハッカソンをきっかけに、わずか2週間でプロトタイプを実装した。開発したソリューションでは、Microsoft Graph APIを用いてメールの情報を、SAPからは関連する販売伝票のプロセスデータを取得。CelonisのAI機能「Annotation Builder」が自然言語で書かれたメール本文を解析し、「どの伝票に関するやり取りか」「現在のステータスはどうか」「出荷がブロックされている理由は何か」といった重要情報を自動的に抽出し分析する仕組みとなっている。
これにより、担当者はダッシュボード上で状況を把握し、AIが推奨するネクストアクションや自動生成されたメール下書きを活用して、迅速に次の業務へ移れるようになった。マネージャーは、滞留している案件やその原因、経過日数などを一目で把握できるようになったことで、チーム全体の進捗状況を俯瞰し、ボトルネックとなっている箇所に対して迅速かつ的確な指示を出すことが可能となった。