お客様事例:株式会社マクニカ

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株式会社マクニカは、2030年までに売上高2兆円という高い目標を達成するため、プロセスマイニングソリューション「Celonis」を導入し、全社的なDXを加速させています。単一プロセスの改善からスタートし、現在は複数プロセスを横断的に分析するOCPM(Object-Centric Process Mining)や、Celonisで国内初となるメールデータとAIを活用したユースケースを実装。その活動は、大きな価値創出へと繋がっています。

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商談から受注までのプロセスを横断で可視化し、課題の根本原因の特定を実現

メールという非構造化データをAIで分析し、業務の状況把握とネクストアクションの効率化を実現

部門横断の共通言語となるプラットフォームが構築され、チェンジマネジメントが加速

プロセスの自律化で次世代の事業基盤を築く - マクニカがCelonis×AIで実現する”IT部門が主役”の業務改革

「豊かな未来社会の実現に向けて、世界中の技と知を繋ぎ新たな価値を創り続けるサービス・ソリューションカンパニー」を長期経営構想に掲げるマクニカ。同社は2030年までに売上高2兆円という高い目標を達成するため、プロセスマイニングソリューション「Celonis」を導入し、全社的なDXを加速させている。単一プロセスの改善からスタートし、現在は複数プロセスを横断的に分析するOCPM(Object-Centric Process Mining)や、Celonisで国内初となるメールデータとAIを活用したユースケースを実装。その活動は、大きな価値創出へと繋がっている。同社の先進的な取り組みをリードするIT本部の海老原氏と藤本氏に、その変革の軌跡と今後の展望を伺った。

導入の背景:「Vision2030」達成に向けたDX戦略の要

マクニカは、半導体やネットワーク製品などを扱う技術系専門商社として1972年に設立された。長年培ってきた最先端テクノロジーのソーシング力と技術サポート力を基盤に、近年ではスマートシティやフード・アグリテックといった分野にも事業を拡大し、サービス・ソリューションカンパニーへの変革を推進。年間売上高は、2024年度実績でグループ連結1兆円を突破している。

この変革をさらに加速させ、長期経営構想「Vision2030」において掲げられた売上高2兆円という高い目標を達成するためには、DX戦略が不可欠となる。海老原氏は、Celonis導入のきっかけについて、「DX戦略を進めるなかで、プロセスの可視化を行い、業務改善の糸口を見つけるという取り組みの必要性が高まっていました。Celonisを使用してまだ見ぬ課題を見つけ、それを解決することで価値を生みだしたいと考えたのです」と説明する。

同社のCelonis活用の軌跡は2023年、受注管理と商談管理という単一プロセスの可視化から始まった。わずか3カ月で可視化を達成し、その後、2024年には調達管理、債権・債務といった会計領域にも展開。しかし、活動を進めるなかで、単一プロセス分析だけでは見えない、より大きな課題に直面することになる。

「ケースセントリック(単一プロセス)だけでは、問題の真因にたどり着くことができない。大きな価値を刈り取るためには、複数のプロセスをまたいだ分析が必要だと感じました」(海老原氏)

ソリューション:プロセス横断とAI活用で業務の全体像を掴む

単一プロセスの改善活動だけでも、マクニカは24個の改善ユースケースを発見するなど大きな成果を見出していた。しかし、さらなる高みを目指し、同社はプロセス横断での分析、そしてAIの活用へと踏み出した。

1. OCPMによる「デジタルツイン」の実現と全体最適化

夜間バッチで自動更新されるはずの受注伝票の価格が、なぜか日中に手動で変更されている——その根本原因は、ERPではわからない営業担当者と顧客との交渉や、別システムでのマスター登録など、複数のプロセスにまたがって存在していた。

こうした相互に関係し合うプロセスの実態を正確に捉えるのが、OCPMだ。OCPMは受注、品目、出荷といった関連オブジェクトを横断で分析し、プロセスを立体的に可視化することで、これまで見えなかった根本原因の特定を可能にする。

マクニカはOCPMを導入し、CRMからERPまで、商談から受注に至るプロセスを横断で繋ぎ合わせ、業務のリアルな姿を再現する「デジタルツイン」を実現した。

この取り組みをリードした藤本氏は、その過程と成果を次のように語る。

「システムを横断してデータを繋ぐうえでは、いくつかの挑戦がありました。まず、システムごとに担当者や保守パートナーが異なるため、通常の業務があるなかでヒアリングを行い、専門的な知見を集める必要がありました。また技術的にも、システムごとにデータを紐づけるための識別情報の扱いが異なっており、どうすればこれらを正確に連携させてプロセスを可視化できるかが大きな課題でした。

しかし、Celonis社のサポートも得ながらこの課題を乗り越えることができました。その結果、商談(CRM)から受注(ERP)までの一連のプロセスを初めて横断で可視化できたのです。これにより、たとえば1つの受注に対してどれだけ過度な訪問や見積作成が行われているかといった非効率を発見できました。さらに、受注時にオペレーターが入力していた情報が、実はその前の商談段階でCRMに登録済みだった、といった部門間の重複作業も明らかになり、大きな成果が得られました」(藤本氏)

2. 国内初! CelonisのAI活用による非構造化データの分析

OCPMで大きな手応えを得たマクニカが次に挑んだのが、メールという非構造化データを取り込んだAI活用だ。これは、Celonisの導入事例において国内初の取り組みとなる。部門間の煩雑なコミュニケーションの中心にあったメールをAIで分析することで、これまで見えなかった課題の可視化と効率化を目指した。

「当社の営業担当者がハブとなり、部門を横断して多くのコミュニケーションが発生していました。これをAIを使ってスリムな形にすることで、より本来の営業活動に多くの時間を割けるようにすることが狙いです」(藤本氏)

この取り組みでは、Celonisが開催したAIハッカソンをきっかけに、わずか2週間でプロトタイプを実装した。開発したソリューションでは、Microsoft Graph APIを用いてメールの情報を、SAPからは関連する販売伝票のプロセスデータを取得。CelonisのAI機能「Annotation Builder」が自然言語で書かれたメール本文を解析し、「どの伝票に関するやり取りか」「現在のステータスはどうか」「出荷がブロックされている理由は何か」といった重要情報を自動的に抽出し分析する仕組みとなっている。

これにより、担当者はダッシュボード上で状況を把握し、AIが推奨するネクストアクションや自動生成されたメール下書きを活用して、迅速に次の業務へ移れるようになった。マネージャーは、滞留している案件やその原因、経過日数などを一目で把握できるようになったことで、チーム全体の進捗状況を俯瞰し、ボトルネックとなっている箇所に対して迅速かつ的確な指示を出すことが可能となった。

導入効果:Celonisはチェンジマネジメントを実践するプラットフォーム

プロジェクト開始から約1年半ですでに大きな成果を上げているが、海老原氏はCelonisがもたらす価値は金額以上のものだと強調する。

「Celonisはまさにチェンジマネジメントのプラットフォームになっています。今まで業務部門が『あそこが課題だよね』とぼんやり思っていたことが可視化され、『やはりこれが課題だったんだ』と共通認識を持てるようになりました。これにより、今まで解決まで進まなかったことが、実際に課題の解決に繋がったケースがいくつも出てきました。

私たちのプロジェクトはソリューションを実装して終わりではありません。Celonisで継続的にモニタリングを行い、想定した価値を実際に刈り取るまでが本当のゴールです。もし効果が出ていなければ、このプラットフォーム上でさらに課題を突き詰め、解決していく。Celonisは、その改善サイクルを回し続けるための基盤となっています」(海老原氏)

この変革を支えたのが、強力なプロジェクト体制だ。経営層の支援のもと、改善意識の強い現場メンバーがアサインされ、IT部門、業務部門、そして推進役のBPMチームがワンチームとなってプロジェクトを推進したことが、成功の大きな要因となっている。

今後の展開:AIエージェントが導く「Autonomous Enterprise」へ

マクニカは今後、AIアシスタントをネクストアクションの提案者から自律的に動くエージェントへと進化させていく構想を描いている。従業員一人ひとりが主体的に行動する同社の企業文化を基盤としながら、今後はAIエージェントが自ら課題を見つけ、RPAなどと連携して自律的に業務プロセスそのものが改善される状態、すなわち「Autonomous Enterprise」の実現に向けて歩みを加速しているのだ。

「Celonisのオーケストレーションエンジンを中核として、各種システムを連携するイメージです。RPAや標準コンポーネントなど適切なソリューションと連動させて、分析結果からすぐにアクションに繋げることで、業務改善を一気に前進させることができると考えています。AIによって非構造化データを取り込めることが、今後の大きな可能性を広げてくれるはずです」(藤本氏)

最後に、海老原氏が語ったのは、単なるシステム導入を超えた変革の本質だった。「Celonisは、会社が変わるきっかけや仕組みを社内に実装できるシステムだと感じています。IT部門が裏方ではなく、変革の主役になれる。そんな手応えを得ています」(海老原氏)

一部の業務から始まった変革の波は、今や全社を巻き込み、未来の自律型企業の姿を具体的に描き出しつつある。マクニカの挑戦は、すでに次のステージへと向かっている。