事例講演
イベントレポート第二弾では、毎年好評を頂いているCelonisを導入されている実際のお客様の4つの事例講演についてご紹介します。
Celonisは、2026年7月28日、ANAインターコンチネンタルホテル東京にて、「Process Intelligence Day Tokyo 2026」を開催しました。本イベントでは、「Make Enterprise AI Work(エンタープライズAIの実用化)」をテーマに、AIを業務に定着させて具体的な価値を生み出すためのロードマップや、国内外の先進事例をご紹介しました。本稿では、お客様導入事例4講演の内容をご紹介します。
なお、イベント当日の各講演については、こちらからご覧いただけます。
イベントレポート第二弾では、毎年好評を頂いているCelonisを導入されている実際のお客様の4つの事例講演についてご紹介します。
事例セッションでは、明治安田生命保険相互会社 事務サービス企画部(事務開発担当)支払開発グループ グループマネージャーの清水 朋子様と、事務オペレーション部 保険金・給付金支払センター 給付金査定グループ グループマネージャーの安間 健太郎様が、給付金支払業務へのCelonis導入について語りました。
同社の2025年の保険金・給付金・年金の支払件数は844万9,000件、支払額は1兆7,780億円に達します。2019年から2023年にかけて大規模な業務改革を進めたものの、次の改善施策を見いだしにくい状況にありました。プロセスデータの取得には1~4週間を要し、「肌感覚に基づく主観的な議論が多発していた」と清水様は振り返ります。流入・処理件数の把握にも1~3営業日を要し、給付金支払態勢の整備が後手に回っていました。
そこで、リアルタイムでの可視化を実現するためCelonisを選定しました。「既存の社内ツールで代用できるのではないか」という経営層の懐疑的な声に対しては、なぜ今、可視化が必要なのかを繰り返し具体的に説明し、粘り強く説明を重ねて社内決裁を得ました。開発では、自社システムを熟知したパートナーの支援を受け、基幹システムの改修を伴わない形で、Celonisの利用経験が浅い担当者でも迷わず使えるダッシュボードを構築しました。
導入後は、工程ごとの流入件数をリアルタイムに把握でき、繁忙な工程へ応援要員を配置する機動的な人員配置が可能になりました。査定者ごとの処理件数や処理時間も把握できるため、個々に応じた育成にも活用しています。また、商品別・不備原因別のボトルネックの特定、支社間の事務処理品質の格差の分析と課題のある支社への個別指導も進めています。「(業務が)見えるようになったからこそ、次にやるべきことが明らかになった」と安間様は語り、今後は人財育成とツールの高度化を通じて、改善サイクルを定着させる方針を示しました。
続く事例セッションでは、リコー株式会社 技術本部 DT技術開発センター BPDT開発室 開発1グループ リーダーの山口 貴之様、DX本部 ワークフロー革新センター プロセスDX推進室 アナリティクスグループ ビジネスアナリストの水谷 仁美様、同開発1グループ データエンジニアの三木 芳彦様が、Celonis AIハッカソンでの優勝を起点に、現場と進めた共創について語りました。
同社は、「可視化」「最適化」「デジタル化」の3ステップで構成される「プロセスDX」を推進してきました。ただし、業務は常に変化するため、一度きりの可視化では実態とのずれが生じます。そこで、現実の業務と継続的に同期する、業務プロセスのデジタルツインが不可欠と考え、その実現手段としてCelonisを採用しました。その結果、「ヒアリング中心の可視化では難しかった滞留や遅延の把握を、データに基づいて行えるようになった」と水谷様は語ります。
どの現場から着手するかの判断では、Celonisの活用で重視される3つの観点(目的・関係者・プロセス)に、現場が主体的に変革を進める土壌があるかという視点を加え、「現場(Genba)・データ(Data)・プロセス(Process)」の頭文字を取った独自の指標「GDP」として独自に整理しました。そして、その3つの条件が揃うコンタクトセンターを最初の対象に選び、土台づくりを先行させるのではなく、ユースケースの具体化から着手しました。
2026年4月に開催されたCelonis AIハッカソンでは、機器からの自動通報への対応を対象としました。「人が電話をかける前に、お客様自身で解決できる機会をつくる」と山口様はその狙いを語ります。過去の解決記録をもとに、AIが自己解決の可能性を判定し、構造化したナレッジをお客様に自動案内する仕組みを構築しました。結果は年間約7.5億円の価値ポテンシャルを試算。見事に優勝を果たしました。
その後は、役割設計とコンテキストドリブン(文脈起点のアプローチ)を軸に、実データで動くデモを起点に現場と対話を重ね、3か月で、コンタクトセンターとCOE、Celonisの3者による共同プロジェクトの正式発足につなげました。「現場のコンテキストをチームが扱える形に循環させることが、改善サイクルを高速化する」と三木様は振り返ります。今後は、デジタルツインの対象を広げていくとしています。
事例セッションでは、富士通株式会社 マネージドインフラサービス事業本部 PRSビジネス事業部の種田 一富様が、CelonisとAIを組み合わせた業務プロセスを変革する取り組みについて語りました。
最初の取り組みは、保守部品の配送プロセス改善です。年間40億円を超える物流費のうち、9億円が高コストな緊急配送に充てられていましたが、現場からは「最適な輸送手段を選んでいる」という声が上がり、議論は前に進みませんでした。
そこでCelonisを使って可視化したところ、部品は2時間で届いている一方、エンジニアが出動するのは36時間後という乖離が多数見つかり、通常配送のスケジュールが現場のニーズに合っていないことが判明しました。そこで緊急配送の要件を厳格化し、通常配送の利便性を見直した結果、初年度に1.3億円のコストが削減できました。
次に着手したのは、約250万点、金額にして1,000億円規模に膨らんだ部品在庫の適正化です。11のシステムに分散していたデータをCelonis上で統合的に分析したことで、工場ごとに個別に行われていた発注判断や、コロナ禍に締結した長期契約に起因する余剰在庫・陳腐化在庫の実態が明らかになりました。
一方で、ダッシュボードが増えるほど、現場では確認しきれなくなるという課題もありました。そこで発注申請の内容をAIに一次判断させ、判断根拠とともに、「要レビュー」などのコメントを返す仕組みを構築しました。最終判断は人が担う設計としたことでAIへの不安を和らげ、在庫を18%削減することにつなげました。現在は、消化しきれなかった余剰在庫の要因を過去のデータに遡って分析し、営業部門を含むプロセス全体の最適化を進めています。
そして種田様は「部分最適の積み上げは全体最適にならない」「判断に必要な範囲のデータを揃える」「AIに何を任せ、どのようなアウトプットを求めるかを明確にする」の3点を要点として挙げ、セッションを締めくくりました。
事例セッションでは、株式会社エイト日本技術開発 プロセスイノベーション本部 情報戦略グループ 主査の鈴木 慎也様と、Celonis株式会社 サービス事業本部 プロフェッショナル・サービス部 シニア・デプロイメントエンジニアの姜 正弘が、2026年3月に始動したAI導入プロジェクトについて語りました。
エイト日本技術開発の技術者は900名を超えますが、その年齢構成は50代以上と20代に偏り、40代前後の層が薄い状況です。「今の延長線上に、会社の未来はない」と鈴木様は語り、ベテランの経験が個人の暗黙知にとどまっている現状を説明しました。ナレッジデータベースの取り組みも過去に始まりましたが、定着には至らず、現場の負担を抑えながら知見を蓄積する仕組みが必要でした。
そこで掲げたビジョンが「誰もが過去最高の技術者と働ける生産現場」です。AI導入支援プロジェクトでは、CelonisのAI専任メンバーが「Discovery」「AI Prototype」「Solution Architecture Design」「Implement, Go-Live&Scale」といったAIユースケースの発見から本実装・展開まで、全フェーズを通じて伴走します。そして各フェーズに「この課題に本当にAIが必要か」を見極める判断ポイントを設け、AI活用そのものが目的になることを防いでいます。現場を重視して議論した結果、事業部を越えて20を超えるユースケースが挙がりました。
その中で先行して検討したのは、類似案件の検索と、案件内容の変更管理です。前者はSalesforceの案件情報で一次検索した後、特記仕様書の内容で絞り込む2段階の仕組みとし、ベテランの着眼点をAIによる検索に反映させます。後者は会議やメールに散在する変更依頼の情報を構造化し、報告書への反映漏れを防ぎます。
「非構造化データにこそ深いコンテキストが含まれています」と姜は述べ、業務全体を一貫して支援する構想を示し、続いて鈴木様は「関係者が議論する場づくりが、取り組みを現場に定着させる鍵だ」と締めくくりました。
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