Celonisプロダクトセッション
イベントレポート第三弾では、Celonisのプロダクトセッション7講演についてご紹介します。
Celonisは、2026年7月28日、ANAインターコンチネンタルホテル東京にて、「Process Intelligence Day Tokyo 2026」を開催しました。本イベントでは、「Make Enterprise AI Work(エンタープライズAIの実用化)」をテーマに、AIを業務に定着させて具体的な価値を生み出すためのロードマップや、国内外の先進事例をご紹介しました。本稿では、Celonisプロダクトセッションを中心に各講演の重要なポイントを抜粋して紹介します。
なお、イベント当日の各講演については、こちらからご覧いただけます。
イベントレポート第三弾では、Celonisのプロダクトセッション7講演についてご紹介します。
Process Intelligence Day Tokyo 2026のスタートを飾る、午前8時30分開始の朝活セッション。ここではCelonis株式会社ビジネスディベロップメント部ビジネスディベロップメントレプレゼンタティブの須澤 弘貴と白井 一茂が、同社の基盤技術であるプロセスマイニングと、AI時代におけるその役割を紹介しました。
須澤はまず、プロセスマイニングについて、業務システムからイベントログを取得し、「誰が・いつ・何をしたか」をつなぎ合わせて、業務の実態を可視化・分析し、改善につなげる技術だと説明。従来のインタビュー中心のプロセスマッピングは記憶に依存し、部分的かつ属人的になりがちでしたが、Celonisはデータに基づき、客観的かつ網羅的に実態を捉えられると述べました。
Celonisの真価は、部門横断的な分析にあります。たとえば購買部門での早期納品は、支払期日の前倒しや在庫保管コストの増加など他部門にも影響を及ぼします。こうした部門間の影響まで一元的に可視化できるとして、須澤は、Celonisが企業全体を部門横断的にデジタルツイン化できる点を強調しました。
続いて白井は、エンタープライズAIを適切に機能させる要件を解説しました。AI活用には、単なるデータではなく業務の繋がりを示す「コンテキスト(文脈)」が不可欠です。
各部門が個別にAIを導入すると、業務の文脈が分断されがちですが、Celonisは複数システムのログをエンドツーエンドでつなぐことで、企業全体で共有できるコンテキストを作り出します。白井は、こうしたプロセスデータからコンテキストを生み出す「プロセスインテリジェンス」こそが、AIのための強力なコンテキスト基盤となり、変化に柔軟に対応する自律的なプロセスへの変革を支えるのだと締めくくりました。
プロダクトセッションのトップバッターは、同社 バリューエンジニアリング統括本部 第二本部 リード・バリューエンジニアの尾崎 直子と 同統括本部 Applied AI本部
アソシエイト・バリューエンジニア 相原 汐花です。このセッションでは、エンタープライズAIの核となる「Context Model」を取り上げ、実際の業務文脈を可視化する仕組みを解説しました。
尾崎はまず、企業がAIを使いこなすうえで重要になるのが、「コンテキスト(業務の文脈)」だと指摘しました。汎用AIは自社固有の業務やビジネスを前提としていないため、「商品を再発注すべきか」と尋ねても、一般論しか返せません。自社の文脈を正しく与えて初めて、AIは専門家が判断するように、具体的な次の対応まで示せるようになります。
その文脈を生み出すのがCelonisのContext Modelです。プロセスデータ、業務ルールなどの知識、将来予測に用いるインテリジェンスの3層で構成されます。土台となるのが、オブジェクトセントリックプロセスマイニング(OCPM)です。尾崎は、業務を横断してエンドツーエンドに可視化できるため、「発生した事象から真の原因までたどれる」点が強みだと述べました。相原も続けて、「これまでプロセスデータを蓄積してきたからこそ、コンテキストを持つAIの活用が可能になる」と応じました。
さらに相原は、価値はインサイト・意思決定・アクションの掛け合わせによって生まれるとし、AIは導入して終わりではなく、AI活用による成果を継続的にモニタリングすることが不可欠だと強調しました。CelonisはAIエージェントの投資対効果まで追跡し、既存のIT資産を活用しながらコンテキストを充実させることで、AIがより適切な回答を継続的に導き出せる基盤になると説明しました。
続いては、同社バリューエンジニアリング統括本部 第二本部 バリューエンジニアの王 衝が、前のセッションで紹介された「Context Model」を土台に、インサイトの発見から実行までを一貫してつなぐ独自のAI機能を紹介しました。
王はまず、Context Modelによってデータ基盤が整っても、現場にはなお3つの壁があると指摘しました。業務メールや議事録などの重要情報が非構造化データのまま蓄積されている「データの壁」、データがあっても何が問題か把握できない「インサイトの壁」、そして問題を把握できても行動に移せない「実行の壁」です。
Celonisは、この3つの壁に対応するAI機能を備えています。1つ目の「AI Annotation Builder」は、非構造化テキストをLLMが意味内容に基づいて解釈し、その情報をContext Modelに統合します。
2つ目の「Insight Explorer」は、プロセスのパターンや根本原因をAIが自動で検出し、優先度を付けて提示します。数週間を要していた分析を、数分で実行できるようになります。
3つ目は、発見したインサイトをもとに現場のアクションを最適化する「Orchestration Engine」です。人による作業、自動化、AIエージェントを組み合わせ、アクションまで自律的に実行します。
デモでは、自由記述で入力された購買依頼の内容をAIが商品カタログと照合し、担当者が承認するだけで既存の発注システムへ連携される流れが示されました。改善による経済効果も試算されました。
これら3つの機能がそろうことで、「Context Modelは業務文脈を捉える基盤から、業務を実際に動かすエンジンへと変わる」と王は強調しました。分析・設計・運用を繰り返しながら、インサイトの発見から改善・実行までを一連のサイクルとしてつなげていきます。
続くプロダクトセッションでは、同社バリューエンジニアリング統括本部 第二本部 本部長の太田 陸登が、視点を人と組織に移し、AI時代に改善を実行し続ける組織の条件を語りました。
太田はまず、DX(デジタルトランスフォーメーション)からAX(AIトランスフォーメーション)へと呼び方が変わっても、問われ続けているのは変革を実現する力そのものだと指摘しました。AIは個人の生産性を高めた一方、全社の業績や業務成果には、まだ十分に結び付いていません。そこでAI活用の単位を個人から組織へと広げ、AIを業務プロセスに組み込み、測定可能な成果を継続的に生み出す「エンタープライズAI」が求められると述べました。
その実現を阻んできたのが、プロセスやデータ構造に関する専門知識という高い壁です。太田は、データ構造の理解などをAIが支援し、実行の壁が下がりつつあると語りました。例に挙げたのは、半年前までプロセスインテリジェンスをほとんど知らなかった3人のチームです。彼らはAIの支援を受けて知識を身に付け、業務を再現するデジタルツインを自力で構築しました。そして半年後には、独自の方法論で変革を主導するまでに成長しました。これを動かしたのは、自らやり切ろうとする3人の強い主体性でした。
ただし、個人の熱量だけに頼れば、改善活動はやがて停滞します。だからこそ太田は、熱量に仕組みを加えることを訴えました。改善機会を継続的に発見・共有する「リズム」と、生み出した価値を可視化し、経営判断に反映する「ガバナンス」です。この2つのエンジンがかみ合うことで、改善は個人の努力に依存するものから、継続的に機能する仕組みへと変わります。
そして、整った仕組みの上では、特別なスキルがなくても一人ひとりがチェンジメーカーになれます。実際に、プロジェクトリーダーから部門長、CIOへとキャリアを広げた担い手もいます。太田は、「実行の壁が下がり、仕組みがそれを支え、その仕組みが次の担い手を生む」と述べ、この連鎖こそがAI時代の変革の姿だと締めくくりました。
本セッションのテーマは、エンタープライズAIをいかに成果へ結び付けるかです。同社バリューエンジニアリング統括本部 Applied AI本部 シニア・バリューエンジニアの大松 弘太郎とサービス事業本部 プロフェッショナル・サービス部 シニア・デプロイメントエンジニア – AI の平澤 啓子が、その技術基盤を実機デモとともに紹介しました。
大松はまず、AIへの投資が増える一方で、財務インパクトにつながっていない「ROAI(AIの投資対効果)の乖離」を指摘しました。その原因は、モデルがどれほど高性能でも、自社固有の業務文脈を持たないことにあります。そこで鍵になるのが、現在・過去の業務データや制約、将来予測を、生きたデジタルツインとしてAIに提供するContext Modelだと述べました。
その文脈をさまざまなAIへ届けるのが、標準プロトコル「MCP(Model Context Protocol)」です。大松はこれを「AIエージェント向けのUSB Type-Cポート」と表現し、AI開発基盤やプラットフォームを問わず、共通の業務文脈を提供できると説明しました。
後半は平澤が、AIエージェントの実行状況や判断の過程を可視化する「Agent Mining」を解説しました。平澤は、「プロセス分析に必要なのはID、イベント、タイムスタンプの3つだけ」と述べました。AIの稼働記録として取得できる標準形式のログがこの3点に対応するため、既存のIT資産を活用したまま、人・システム・AIを同じ基準で把握・分析できると示しました。
これらがそろえば、散在するエージェントの状態を一元的に把握し、共通のルールと最新状況を各AIへ提供できます。さらに、エージェントの稼働が増えるほど業務文脈が蓄積され、判断の継続的な改善にもつながります。両氏は、これこそが全社のAI活用を一元的かつ安全に管理する「管制塔(Control Tower)」だと締めくくりました。
プロダクトセッションに登壇したCelonis株式会社サービス事業本部 プロフェッショナル・サービス部 リード・プロジェクトマネージャー の森 貴之は、製造業のAIが現場で止まり、成果に結び付かない理由を、「文脈(コンテキスト)」の欠如という切り口から解説しました。
森はまず、部門ごとにKPIや管理系統が異なり、データが無数のシステムに分散する「サイロ化」を指摘しました。自分の担当区間は見えても、業務全体を端から端まで見たことがある人はいません。見えていないために、上流のつまずきが下流で増幅します。生産計画の誤登録、製造指示への割込み、設計変更がBOMに伝わっていないこと。発端はどれも小さく、それが数ヶ月後、緊急輸送費や在庫の廃却、ライン停止といった全く別の場所のコストになって現れます。原因が生まれた場所と費用が出る場所が離れていることが、製造業の難しさです。BIは何が起きたかを示せても、なぜ起きたかまでは分かりません。データを1箇所に集めても、それぞれがどう繋がるべきで、何を良しとするかは、集めただけでは分かりません。また、自社の工程や顧客との約束を前提としていない生成AIは、優秀な新入社員と同じで、一般論しか返せません。人が把握できていない情報をAIに提供することはできないため、足りないのは業務の実態を一本につなぐ文脈だと述べました。
プロセスはもともと繋がっていて、散らばっていたのはその記録です。その文脈とは、実際に何がどの順番で起きたのかというプロセスデータ、何を良しとするのかという目標・KPI、そして熟練者の頭の中にしかなかった自社独自の仕事の進め方という3つを、実際のシステムから組み上げたものです。3つ目は誰かが書き出して登録するものではなく、日々の判断が行動としてシステムに残っているため、実データから浮かび上がらせることができます。これがCelonis Context Modelです。森は「SAPも、計画系も、そのままです。Celonisは別のレイヤーに入って、乱れた流れを整える」と述べました。Celonisが入るのは計画と実行の間です。計画通りに動いているかを実データで捉えて是正し、分かった実態を計画に返して、リードタイムの前提や発注点を実態で賢くする。この循環だと説明しました。
この文脈をAIに提供すれば、AIは一般論ではなく、自社固有の業務前提に即した回答を返せるようになります。回答が返るところまでは入口です。その文脈の上でAIと人が判断し、是正まで実行できて、はじめて品質・コスト・納期(QCD)が動きます。森は、欧州の大手自動車メーカーで市場不具合の解決までの時間が55%短縮、富士通でAIによる発注レビューにより全工場の在庫が20%削減された例と、グローバル大手電力機器メーカーが納期遵守率(COTD)の改善により年間1.8億ユーロの削減を目標に取り組む例を紹介しました。
森は「見えないものは、改善できない。でも、見えたら、ここからが本題です」と語り、見えて終わりにせず、品質・コスト・納期の成果に変えるところまで踏み込めることが、製造業でCelonisが選ばれている理由だと述べました。
プロダクトセッションを締めくくる本セッションでは、ユースケースからアーキテクチャへと視点を移し、Celonis株式会社バリューエンジニアリング統括本部 統括本部長 兼 Applied AI本部長の寺田 有汰とバリューエンジニアリング統括本部 第二本部 シニア・バリューエンジニアの岡崎 心作が、AI時代に業務コンテキストをどのように構築・統制していくかを解説しました。
寺田はまず、AIエージェントを実務で成果に結び付けるには、データを収集・構造化・統制する基盤が欠かせないと指摘しました。とりわけコンテキストの構築方法が重要です。ワークフローの定義や文書の読み込みだけでは、システム外で行われる処理やルール変更に追随できず、コンテキストの品質が低下してしまいます。だからこそCelonisは、「事実を観測し、そこからコンテキストを作る」ことにこだわっていると述べました。
そのアプローチを、岡崎が銀行の口座開設業務のデモで示しました。このデモでは、一例として、システムログに加えてデスクトップ上の操作ログを「Task Discovery」で取得し、LLMが35万件を超える操作記録を17種類のタスクに自動で分類・構造化しました。従来はコンサルタントが数か月かけていた業務理解を、実測データから短時間で可視化しました。岡崎は、「熟練者の頭の中にしか存在しない知識をどう残すかが本日のテーマだ」と語り、属人化した判断や例外処理まで可視化できると強調しました。
続いて寺田は、こうして収集したデータをコネクターやMCPで接続し、既存のIT環境を大きく変更することなく、AIへ確実な業務コンテキストを提供するアーキテクチャを提示しました。業務改善による財務インパクトまで可視化できる点にも触れ、多様なAI開発基盤と接続できる柔軟性を強みとして挙げました。
最後に両名は、データを構造化して統制すること、コンテキストを事実から作ること、そして既存のIT資産を最大限に活用することが、AI時代のアーキテクチャにおける重要なポイントだと説明し、セッションを締めくくりました。
※ 登壇者の部署および役職は、イベント開催当時(2026年7月時点)のものです。
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