プロセスマッピングとは

定義と基礎

プロセスマイニング、プロセスマッピング、プロセスモデリング…。それぞれの違いは何で、どのように組み合わさっているのか。

これらはいずれも、企業が自社のプロセスを図式化または視覚的に表現するのに役立ちます。ただし、それぞれがどのような方法で実現するか、どれだけ効果的に達成できるかが、それらを差別化するポイントです。Celonis Process Intelligence プラットフォームで用いられているプロセスマイニングは、基本的なプロセスマッピングのアプローチに比べて大きな利点があります。

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プロセスマッピングという言葉は一見すると直感的に理解できそうですが、ビジネスプロセス改善の分野には類似した用語や手法が数多く存在するため、その意味が曖昧になってしまうこともあります。

プロセスマッピングとは

ビジネスのプロセスについてフローチャートを作成したことがあるなら、それはすでにプロセスマッピングの一部を行ったことになります。

ワークフローマッピング、ワークフロープロセスマッピング、あるいはバリューストリームマッピング(VSM)という言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、これらはすべてプロセスマッピングの一種であり、本記事ではその中でも特にVSMについて詳しくご紹介します。

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プロセスマップは通常、フローチャート形式で作成されますが、時には一直線の図のような非常にシンプルなものになることもあります。この種のプロセスマッピングは、システムの移行や導入時に役立つことがあり、各プロセスのステップを時系列順に分解して整理するのに有効です。

これらのプロセスの各ステップを特定するために、プロセスマッピングでは、関連する事業部門を対象にワークショップ、アンケート、インタビュー、タイムスタディ、KPIレポートなどを活用します。自社でこうした社内調査を行い、付箋を使ってプロセス全体を整理する代わりに、企業はプロセスマッピングを専門とするコンサルタントに依頼することもあります。

プロセスマッピングとプロセスマイニングの違いは何ですか?

プロセスマッピングとプロセスマイニングはどちらも、ビジネス全体で何が起こっているのかを把握するために設計されていますが、両者は全く異なります。

ビジネスプロセスマッピングは時間がかかり、労力も必要であり、組織内のさまざまな利害関係者からの意見を求める必要があります。この意見収集は通常、複数部門を横断するワークショップで同時に行われるため、特定のプロセスの運用方法に対する責任について、各チームが防衛的になり、責任のなすりつけ合いが生じることがあります。

そして、すべての作業の末に得られるのは、主観的で静的なスナップショットにすぎません。最新の状態に保とうとするたびに(理想的には定期的に更新すべきですが)、同じ手順を最初から繰り返す必要があり、同様のコストが発生します。

プロセスマイニングは、業務をより簡単にしてくれます。これは、ビジネスプロセスを客観的かつ継続的に改善していく全体像を提供してくれるためです。プロセスマイニングは、主観的な見解やバイアスではなく、基幹システムのデータを活用してプロセスを自動的に再構築するため、より正確な把握が可能になります。プロセスの運用方法や相互関係に関するチームの印象に頼る必要がなく、見落としやプロセスの死角、誤解といったリスクにも左右されません。そのため、プロセスマイニングから得られる洞察や改善アクションに、より高い信頼を持つことができます。これにより、利害関係者からの競合する要求にも、より適切に対応できるようになります。

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さらに、リアルタイムデータを活用することで、常に最新の「生きた」プロセスの可視化が可能になるという利点もあり。これにより、ある時点での静的な情報ではなく、時間の経過とともに変化するプロセスの可視性、透明性、理解を得ることができます。つまり、プロセス改善が主要なKPIに与える影響を継続的に定量評価し続けることが可能になるのです。

プロセスマイニングの仕組みや、プロセスマッピングとの違いについては、比較記事で詳しくご紹介しています

プロセスマッピングの利点は何ですか?

より強力な後続技術であるプロセスマイニングによってその影が薄れたとはいえ、プロセスマッピングは、自社の業務プロセスに関する事前の知見がないままプロセス改善に着手する企業にとって、出発点となり得ます。

企業はプロセスマッピングを活用することで、ボトルネックやコンプライアンス違反、文書の欠落などを明らかにすることができます。また、プロセスマイニングソリューションに投資するよりも、プロセスの可視化や標準化を得るための手間の少ない方法のように思えるかもしれません。しかし、これは結果的に「安物買いの銭失い」となる可能性があります。上記の「プロセスマッピングとプロセスマイニングの比較」セクションで詳しく説明しています。

企業は、ワークショップのようなプロセスマッピングの手法が、さまざまな利害関係者を集めるうえで有益であると感じることもあります。こうした手法は、変革や改善の取り組みに対する合意形成を得る助けになると考えられています。また、これまで縦割りで業務を行ってきたり、他部門の業務内容について誤解を持っていたチームや部門間で、知識共有や協力の文化を促進する効果も期待できます。

プロセスマップの種類

フローチャートは、プロセスマップの要です。フローチャートは、プロセスマップの基本中の基本です。シンプルなプロセスであれば、作成も解釈も比較的容易ですが、その一方で、リソース要件などの詳細な情報を捉えるには不向きという欠点もあります。目的に応じて使い分けられる、さまざまなプロセスマッピング手法が存在します。たとえば、次のようなものです。

  • ハイレベルプロセスマップ(またはSIPOC図):プロセス内における大まかなワークフローのつながりを示す、構造化されたフォーマットです。これらのマップでは、活動や要件を「供給者(Suppliers)」、「インプット(Inputs)」、「プロセス(Process)」、「アウトプット(Outputs)」、「顧客(Customers)」に分類することで、部門横断的に最も関連性の高い情報や影響を特定しやすくなります。
  • スイムレーン図(またはクロスファンクショナル図):役割や機能ごとに活動を示す図で、組織全体における依存関係や相互作用を視覚的に把握できます。
  • バリューストリームマップ:製品やサービスが顧客に届くまでのプロセスを示すのによく使われる図で、通常は各工程の所要時間をタイムラインで表し、業務改善の余地がある部分を明らかにします。リーンマネジメントに由来するこのマップは、ムダな活動やプロセスの工程を分析するために設計されています。
  • 詳細プロセスマップ:より大きなプロセスの内の一つの活動(たとえば、サプライチェーン管理プロセスの一部としての仕入先への請求処理)における細かな手順や要件に焦点を当てるのに特に有用です。

プロセスマッピング手法の種類とその例を詳しく見てみましょう

プロセスマッピング記号

ビジネスプロセスマップを一貫して作成・解釈できるようにするために、それぞれのタイプには標準化された記号のセットが用いられます。これには、国際標準である「統一モデリング言語(UML)」に基づく、よく知られたフローチャートの図形が含まれますが、より複雑なプロセスマップ向けには、さらに多くの記号も存在します。ここでは、基本的な記号とその意味に絞って紹介します。

  • 楕円形:プロセスの開始または終了を示し、ターミネーターとも呼ばれます。
  • 矢印:あるプロセスのステップ、判断、または活動から次のステップへの流れを示します。
  • 長方形:プロセスのステップを表します。
  • ダイヤモンド:プロセスにおける決定点を示します。この決定点からは、考えられる結果が矢印で分岐します。
  • 下辺が波状になった長方形:下部がちぎれた紙片のような形をしており、メモや注文書などの文書や情報を表します。
  • 平行四辺形:データの入力または出力を示します。たとえば、メール確認の送信などが該当します。
  • 右辺が湾曲したD字型の長方形:データ処理など、プロセス内での遅延や待機時間を示します。

プロセスマップを作成する方法

ここまでで、さまざまなプロセスマッピング手法や構成要素について見てきました。それでは、実際にビジネスでプロセスマップを作成するための簡潔なガイドをご紹介します。

まず最初に、プロセスマップを正しく作成するために必要な情報を準備することが重要です。そのためには、該当するプロセスやその影響範囲、関係者に応じて、適切な人々と話をする必要があります。たとえば、それがサプライチェーンのような特定の分野に限定されているのか、あるいは複数の業務部門にまたがっているのかによって異なります。情報の収集は、グループワークショップで行うことも、個別にインタビューすることも可能です。

人々が繰り返し行うプロセスに慣れ親しんでいる場合、初心者には分かりにくい詳細を見落としたり、見過ごしたりすることが容易にあります。しかし、包括的なプロセスマップを作成するには、そうした細部もすべて把握する必要があります。そのため、ある程度具体的に指示を出したり、細かなステップや関連する要素を丁寧に引き出したりする必要があるでしょう。

必要な情報がすべて揃ったら、いよいよビジネスプロセスマップの作成に取りかかります。各ステップや詳細を時系列で整理し、先ほど紹介したマップの種類の中から最も適した形式を選びましょう。また、参照できるようにプロセスマップの記号を用意しておきましょう。

作成したプロセスマップが機能しているかどうかを確認するには、プロジェクトに関与していない第三者に見てもらい、内容を理解できるかどうかを確かめてみましょう。もし分かりにくい部分があれば、追加のステップを明確にしたり、場合によっては詳細プロセスマップを新たに作成したりする必要があります。

重複しているように見えるプロセスやステップ、または過度に複雑で非効率的に見える一連の作業が残ったとしても、それらがあなたが行った調査と一致している場合、改善の余地がある領域を特定したことになります。これはプロセスマッピングの演習から得られる大きな成果と言えるでしょう。

ゼロからプロセスマップを作成する方法については、当社のブログでさらに多くのヒントやアドバイスをご覧いただけます

プロセスマッピングツールの選び方

プロセスマップの作成は手作業で行う必要はありません。テンプレートを提供したり、入力したデータからマップを作成したりするプロセスマッピングツールが多数あります。どれを使用するかを決める際に考慮すべきなのは、コストだけではありません。

プロセスマッピングソフトウェアを選ぶ際に注目すべき機能は以下のとおりです。

  • プロセスマップの多様性:ツールによっては、より専門的でフローチャートに限定されているものもあります。例えば、異なる業務機能にステップや活動を割り当てる必要がある場合には、そうしたツールはあまり役立たないでしょう。
  • 使い易さ:業務プロセスを簡素化したり明確化したりするのが目的なのに、操作が極めて複雑なプロセスマッピングツールでは本末転倒です。そのため、あまりにも技術的すぎないかを確認しましょう。あらかじめ用意されたテンプレートがあると、使いやすさが向上し、大幅な時間短縮にもつながります。
  • 他システムとの連携機能:さらに時間を節約できるのが、他のシステムやソリューションと連携できる機能です。これにより、データや自動化のインポート・エクスポートが可能になります。
  • 共同作業ができること:複数の利害関係者と一緒にプロセスマップを作成する場合は、ファイルやバージョンをいちいち送受信せずに済む、コラボレーション機能のあるツールが必要です。そうでないと、作業の進行が滞ってしまいます。

ビジネスプロセスマッピングツールを選ぶ際に確認すべき質問リストをご覧ください

Celonisを使ってプロセスマッピングをより簡単にする方法

プロセスの可視化プロジェクトに取り組むのは気が重いと感じるかもしれません。だからこそ、豊富な実績を持つパートナーと組むことが大切です。Celonisは、10年にわたるプロセス改善の取り組みと導入実績で培ったベストプラクティスと経験を提供しています。

これにより、迅速な価値創出と投資対効果の最大化を実現できます。Celonisプラットフォームは、現在のプロセスを正確かつ効率的にマッピングできるだけでなく、人工知能を活用して改善提案を行うことも可能です。

従来の手作業によるプロセスマッピングとは異なり、Celonisは業界をリードするプロセスマイニング技術を活用し、お客様のビジネスデータを収集・接続して、独自のProcess Intelligence Graph(PI Graph)に接続します。PI Graphは、システムに依存しないビジネスのデジタルツインを構築し、その企業が置かれている独自のビジネス文脈(KPIの定義、改善機会、「良い」「悪い」を判断する基準など)と結びつけて可視化します。次に、AIを活用して、プロセス同士のつながりやビジネスの実態、そしてビジネスをさらに効率的に運営するための方法を可視化します。

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